素材特性

2.含浸処理カーボン材料(樹脂、金属等)の特徴

カーボングラファイトは、素材特性の「カーボングラファイト」で紹介いたしましたような優れた性質を持っています。その反面、高温の大気中の使用では空気中の酸素に反応して酸化をしてしまいます。また、金属やセラミック材料に比べ柔らかい為、欠けや傷付き易い点や、粉塵が発生し易い事など劣る点も存在します。
そういったカーボングラファイトの欠点を補う為に、グラファイトに含浸処理を施した材料があります。「含浸処理黒鉛材の特徴」では含浸される材料の種類やその特性を紹介いたします。

リン酸アルミナ含浸処理

カーボングラファイトは、大気中で400度を超える温度域から、空気中の酸素と炭素が化学反応をし酸化が進みます。酸化を防ぎたい際にリン酸アルミナ含浸処理をすることで材料の酸化を遅らせる事が出来ます。
リン酸アルミナ含浸処理をしたカーボングラファイトは、酸素と炭素が反応してしまう前にて酸素とリン酸を反応させる事により、グラファイトの酸化反応を遅らせる事が出来ます。酸化反応に必要なのはリン酸であり、アルミナは化学的に安定させるための化合物です。従って、耐酸化材として使用するのはリン酸アルミニウムでもリン酸マグネシウムでも代用ができます。
リン酸アルミナ含浸処理を施されたカーボングラファイトは含浸された分の比重が上がります。また、ガラス性の表面になる為、ショア硬度が上がります。
但し、700~800℃程度の使用温度域になると、アルミナが溶融してしまい、耐酸化材として機能はしなくなります。
また、リン酸アルミナ含浸処理のカーボングラファイト材は摺動性(自己潤滑性)が多少低下してしまいます。

リン酸アルミナ含浸処理カーボン、黒鉛材料の主な使用用途

  • 耐酸化黒鉛ルツボ
  • 耐酸化カーボンローラー、搬送機器部品など
  • 非鉄金属鋳造部品(インペラー、ノズル、ストッパー、樋)

樹脂含浸処理

カーボングラファイトは自己潤滑性に優れる為、擦り合わさる部分の部品に使用されています。
グラファイトは割れや欠けが発生しやすい点があります。また、粒子が大きく、金属などに比べ空気や水を透過しやすい点も存在します。
樹脂含浸処理品のカーボングラファイトは主に、機械強度を上げシール性を向上させる為にされる処理です。
含浸される材料が樹脂の為、熱膨張係数が上がります。上り度は含浸される樹脂の種類や含浸量に影響されます。また、樹脂の耐熱温度はおおよそ150~300度程度の為、それ以上の熱には性能が維持出来なくなります。
また、摩擦係数が上ってしまい、摺動性(潤滑性)は多少下がってしまいます。
よく、不浸透黒鉛質カーボンや、不浸透炭素質カーボンなどと、呼ばれています。
※シール性=液体や気体が外部に漏れないようにする

樹脂含浸処理カーボン、黒鉛材料の主な使用用途

  • メカニカルシールリング
  • 液中軸受け
  • 蒸気用ディスクシール
  • 圧縮機ピストンロッド用パッキン
  • ポンプ用パッキン・ブッシュ
  • 送風機用・パキュームポンプ用ブレード

金属含浸処理

金属含浸処理は「カーボンに金属のような強度が欲しい」という考えや「金属にカーボンの様な潤滑性が欲しい」という思いから生まれた材料です。特徴として、

  1. 樹脂では耐えられない腐食性状況や高温度域にも耐えられるようにしたい。
  2. カーボングラファイトの通電性をより上げ、更に耐摩耗性を上げたい。
  3. カーボングラファイト単体や樹脂含浸材では耐えられない衝撃が加わる用途で使用したい。
などの効果を得る為に金属含浸処理が必要です。 金属含浸処理黒鉛は硬度が上がります。更に、比重が上がり、重量が重くなります。

金属含浸処理カーボン、黒鉛材料の主な使用用途

  • 稼動部接続用ジョイントシール
  • バンドソー刃物振れ止めパッド
  • 真空ポンプ・ロータリーコンプレッサー用ベーン
  • ロータリーエンジン用アぺックスシール
  • 冷凍機圧縮機械用高加重ブッシュ
  • 車両用カーボンブラシ(電車・自動車・フォークリフト)
  • 家電品・機械・電動工具用カーボンブラシ

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