炭素入門編

4.黒鉛素材入門(人造黒鉛素材の製法による特性の違い)

黒鉛グラファイト素材は、成型方法の違いから、大きくCIP成形・モールド成形(型込)・押出成形の3つの種類に分かれます。
一般の方がご覧頂いても分かりやすい様に、成型方法の違いによるカーボングラファイトの特性を説明します。
(ただし、この説明がすべて正しく、必ずお客様の環境に対応できるというわけではありません。あくまでも一般的な説明であり、万が一、弊社ホームページを参考にされ損失が発生したとしても弊社は責任を負いません。素材特性値などは、素材メーカー様のホームページ・カタログなどをご参照ください。)

黒鉛の原料

コークス

カーボングラファイトを作る原料は主に石炭コークスから出来ております。
コークスは石炭を蒸し焼きにした物です。石炭を蒸し焼きすることで不純物を抜き、石炭を原料や燃料として利用出来る様にします。カーボングラファイトの約8割がコークスから出来ております。材料となる主成分の事を「フィラー」といいます。

コールタールピッチ

石炭からコークスを蒸し焼きにした際にでる副生成物です。原材料の主成分をフィラーというのに対し、接着剤の役割となるコールタールピッチを「バインダー」といいます。

ピッチコークス

コールタールピッチの炭素化によって作ります。

メソフェーズカーボン

そもそも、メソフェーズとは液体と固体の中間的な性質の物を言います。
メソフェーズカーボンとは、コールタールを約350~500℃で過熱した際に出来る副生成物です。液状のコールタール内のカーボン分子が熱重合で固体化する途中の材料であり、固体のコークスと液体のコールタールピッチの両方の性質を持っています。その為、メソフェーズカーボンから作られる黒鉛材料は、製造の際に原料の一元化が出来るというメリットがあります。言葉で書くと簡単なようですが、熱処理をして抽出するメソフェーズ小球体の粒子径の発達度や、原料の調合方法・保管方法、成形から焼成の製造過程など、材料として製造する工程は大変な技術が必要です。
メソフェーズカーボンを使った材料は、コークスなどを使用した一般的な材料よりも、より高密度で高強度なカーボン材料を作る事が出来ます。

黒鉛の価格

価格は、押出材<CIP材<モールド材(型込)の順に、高価になります。

黒鉛の成型方法による特性の違い

カーボンは素材の成型方法により特性が変わります。
押出成形・モールド成形・CIP成形について、それぞれ紹介します。

押出材(押出成形)「Extruded」

押出材のよい特性は熱膨張係数と固有抵抗値が低い事です。
押出材は□角材と○丸材があります。両方とも発熱体や電解用電極によく利用します。形状の違いから角材は、ボートやトレイによく使い、丸材は、ルツボや管・軸受など円形の製品によく使います。また、ショア硬さが低いため加工しやすい材料です。
押出成形の黒鉛グラファイトには、製造方法上、素材に方向性が出来ます。その為、電流の流れやすい方向と、流れにくい方向が出来ます。よって、角材から電極などを作る際には注意が必要となります。

モールド材(型込成形)「Molded」

モールド成形(型込)の素材は、黒鉛グラファイトの素材メーカー各社が精選された原料を用いて、独自の処理技術を駆使して硬度や純度など、用途に応じた多様な品種を提供されております。その為、お客様の使用環境や使用目的によってモールド材の選定をする事になります。これは、特殊炭素製品に用いる黒鉛グラファイト素材全般に言えることであります。よって、お客様に材料指定していただく事が最も希望に添う製品に仕上げる事が出来ます。モールド材は押出材とおなじように素材に方向性があります。

CIP材(シップ成形)「Cold Isotropic Press」(冷間静水圧プレス)

CIP成形はゴム型にカーボン原料を入れて成形される事から、別名「ラバープレス成形」とも言われます。
CIP材は押出材に比べ、曲げ強さが約2倍、引張り強さも約2倍にあります。
ショア硬さも高い事から、重量物を乗せるトレイや長尺物などによく使います。
また、固有抵抗値が高い為、発熱体としてもよく利用されます。
押出材に比べ密度が高いため、圧力がかかるパイプや、粘性の低い液体を使う用途にはCIP材の黒鉛グラファイトが用いられる事が多いです。
他にも、天然黒鉛質のCIP材があります。
天然黒鉛質の材料はやわらかいのが特徴で、天然黒鉛と他の材料を擦り合わせても他の材料を傷つけない為、滑り板によく使われます。
CIP材は成型方法上、ゴム型を水溶液にいれ素材全体に圧力をかけるため、黒鉛グラファイトの方向性が均一になります。このことから等方性黒鉛ともいわれております。
黒鉛グラファイト素材が必要な環境(装置)は、ネジやボルト、発熱体など、様々な部品の組み合わせで一つの製品を作ります。熱膨張の違いや熱伝導のバラつきが発生しては、機械装置の設計が難しく、熱処理をした際などの製品も均一に仕上がりにくいなどの問題が発生しやすくなります。CIP材には、こういった点を考慮する必要が少なくなる為、設計と検討がしやすくなるメリットがあります。こういった特性から、エレクトロニクス分野、半導体部品や、炉内部品にもCIP成形の黒鉛グラファイトはよく採用されます。

黒鉛の押出材、CIP材の見本写真

押出材とCIP材の見本写真です。
押出材(写真左)は一般的にはCIP材に比べて肌面がやや粗く材料に気孔が見られます。CIP材(写真右)は押出材に比べて肌面が細かく、持った時も重量感があります。

黒鉛の方向性

押出材やモールド材は、成形する際に加わる力の方向により方向性が出来ます。
例えば、Z方向に押出成形された材料はZ向きに方向性が出来ます。
Z方向に対しては抵抗値が低くなり、電流が流れやすくなります。また、熱伝導率もZ方向に高く、熱膨張もZ方向にしやすくなります。
一方、XやY方向に対してはZ方向に比べて緻密性が高くなります。その為、X・Y方向の固有抵抗値は高くなり電流が流れにくくなります。併せて、熱伝導率や熱膨張も低くなります。原料や素材の大きさにもよりますが、抵抗値はおおよそ10%の違いがあります。

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